[次回予告] あすならないバンド道 第5話

OHHA(大阪・東淀川・ハードコア・アソシエーション)に参加した俺は,初めてのライブイベントに出演する!

はじめて出演者として訪れるライブハウス。お客の視線。チケットのノルマ。

全てが新しい経験だった!



「あいつ,なんかカラみにくそうじゃね?」「分かるー!」




あぁ,うっせぇな…




歩み始めたバンド道は,果たして何処に向かうのか。

次回,あすならないバンド道第5話,「東淀川炎上」。お楽しみに。
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[連載] あすならないバンド道 #4 「プラグド・エレキギター」

俺をバンドに誘ったクラスメイトの中尾(仮名)は,野球部丸出しの丸坊主野郎だった。T字カミソリで執拗に削ぎ落したガタガタな短髪頭の俺とは違って,中尾の丸坊主は定型的な五厘刈りだった。同時に奴は野球部的な定型的チャラさを身に纏っていた。女子と仲良く話せるというだけでなく,背負うリュックサックは茶色の迷彩柄であり,そのアメ村的オシャレさからも,前年度の嫌な記憶を思い出させるタイプの男子生徒だった。そのため,当初俺は中尾との接触に消極的だった。

中尾との接近に先立ち,俺は新しいクラスで渡部(仮名)という極めて冴えない男子生徒と仲良くなっていた。渡部がClash好きだと知った俺は,当時流行していたメロコアと呼ばれる速いパンク音楽のテープを彼に貸した。彼は特にスプロケを気に入った。ある日には,配られたプリントの裏に,知っている限りのパンクロックバンドの名前を書き,それを彼に見せて悦に浸ったりもした。そんなこんなを経て,俺と渡部は教室の隅っこ(本当に隅っこだった)でパンクロックの話をするようになった。

中尾はそれを見て,「あぁ,ダサい奴らがB'zの話でもしてるんだろうな」と思っていたらしい。これは自然なことだ。俺と渡部の極めて冴えない風貌からパンクロックなどというトガッた音楽が連想されるはずもない。俺と渡部の会話の半分は,AKIRAやめぞん一刻等のマンガ,ガキの使いやあらへんでのオープニング企画,スーパーファイヤープロレスリング,そして新日の大仁田騒動等についてのものであり,むしろ中尾とはそっちの話題でいつの間にか仲良くなっていた。

そのうちに俺と渡部と中尾は音楽の話もするようになったが,なんせ中尾はチャラい野球部野郎だ。当時のチャラめな男子高校生は,山嵐やSuck Downといったラップみたいな音楽(ミクスチャー等と呼ばれていた)を好む傾向にあったのだが,やはり中尾もその類だった。そのため,あまり中尾の音楽的趣味には同調できなかったが,そこは野球部,タフガイである。当時流行していたニューヨーク・ハードコアを聴かせたところ,そのラップっぽさとタフガイ性が気に入ったらしく,ようやく中尾とも音楽的に共有できるところが見つかったのだった。

そして何かのはずみで俺がギターをやると知った中尾は,自分のやっていたコピーバンドに誘ってくれたのだ。一度で良いからバンドというものをやってみたかった俺は,彼のバンド「OHHA」に参加することを決めた。ちなみにOHHAとは,大阪・東淀川・ハードコア・アソシエーションの略だった。オッハと発音するのが正しい。アソシエーションとはまた大きく出たな。中尾よ。

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[次回予告] あすならないバンド道 第4話

アンプが無い!いまアンプが無くてどうするんだ!俺!


俺のエレキギターは長らくアンプラグドだった。


なぜかって?そりゃお前,ずっと一人でやってきたからさ。



痛みばかりが残った一年が過ぎ,俺はクラスメイトのコピーバンドに,ギタリストとして参加することになった!


しかし,アンプが無い!金もない!


犬山だ!犬山からあのアンプをもらおう!



俺はギターをアンプに繋ぐ。その末に,果たしてバンド道の夜は明けたか。

次回,あすならないバンド道,第4話。「プラグド・エレキギター」。お楽しみに。

[連載] あすならないバンド道#3 「仲間,束の間」

相変わらず冴えない俺も,ついには高校生になった。ラグビー部の強い高校だった(俺は弱小陸上部所属だった)。大阪市内にあったその高校には,それなりにチャラい奴らが集まっていて,俺はまったくそのノリについて行けなかった。正直,高校最初の一年間に,良い思い出など全く無い。俺はこいつらとは違う。そうとでも思わないと,とてもやっていけなかった。


ギターは続けていた。一人,ただ黙々と自室で練習していた。披露する相手も特に居ない。一緒に演奏する仲間も居ない。それでも俺は,とにかくギターを弾き続けていた。学園祭のステージで,ワーキャー言われながらフロアを沸かせる。そんな自分の姿を想像しながら,俺は自室のステージで一人,ヴァーチャル・ギグに勤しんでいた。そして,誰に聞かせるでもなく,一人,それらしいことをしたり顔で言う練習をし続けてもいた。「俺にはギターしかない」と,自分に言い聞かせる毎日だった。犬山の幻想は,俺の腫れ上がった自意識を支える唯一の拠り所だったのだ。膝から崩れ落ちそうな自分を支えたくて,俺はただ,それにすがりついた!

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[次回予告]あすならないバンド道 第3話

ギターを弾くとき,俺はずっと一人だった。

仲間?いた事ない。バンド?夢のまた夢だな。

そんな俺に,彼は声をかけてきた。


「一緒にギター弾こうぜ」


俺に出来たはじめての仲間は,高校のクラスメイトだった。
俺は,こいつとギターをやっていきたいと,思っていた。

そんな束の間の希望について。


次回,あすならないバンド道,第3話。「仲間,束の間」。お楽しみに。

[連載] あすならないバンド道 #2 「ラブソングは盗作」

教室の大きな窓から差し込む光に照らされた凸はすごく綺麗で,私はそれに惹かれたんだと彼女は言った。彼女,山内美紀(仮名)は,大変明るく,誰からも好かれるような,カワイコちゃんだった。

まずもって,俺は山内さんの見た目が好きだった。しかし,当時の俺は女子に話しかけることすら出来ないほどのシャイボーイだった。それも滅多にないことではあったのだが,クラスの女子に話しかけられでもすると,顔面を真っ赤に染め,全身は鋼鉄のごとくこわばり,口からは「ガガガギギギ」と異音を発するといった誤作動を起こすほど,俺は極度の女子不安者だった。そして自意識過剰。当時の俺は,本気でこう思っていた。「この前髪が崩れたら,世界が終わってしまうのではないか」と。そんなやつが,好きな女の子に話しかけられるはずがない。当然,山内さんとは話したこともなかった。


ではなぜ,そんなカワイコちゃんと,中2のチンケなシャイボーイがお付き合いすることになったのか。…犬山だ。俺は犬山に「山内めっちゃかわいい…」とこぼした事があった。すると,なぜかモテていたチャラ男な犬山が,無神経にもそれを彼女に告げ口したのだった。俺はそれを聞いて動揺した。激しく動揺した。冷静に考えて,そんな好意など受け入れられるワケが無かったからだ。俺は犬山に詰め寄りたかったが,犬山はケンカが強いので,やめておいた。

押し出される形で俺は告白をした。きっと,最高にみっともない姿だったと思う。しかし,彼女はそれを受諾した。なぜだか分からず,聞いてみた。すると彼女は,冒頭のような理由を俺に話してくれたのだった。俺は犬山の無神経さに感謝し,お付き合いが始まるという現実に狂喜した。しかし同時に,「俺みたいな冴えないブサメンが,こんなカワイコちゃんに釣り合うはずがない…」とも思った。そんな自意識が,やがて俺を苛むようになったのだった。

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[次回予告]あすならないバンド道 第2話

「俺が君のために作ったラヴソングは,盗作だったんだ…」



その頃,俺はリア充だった。


はじめてできた彼女は,学校でもかなり人気のあったカワイコちゃん。
一方の俺は,これでもかというくらいに冴えない男子生徒だった。

どうすれば,君に似合う男になれるか…。


その答はギターが持っていた。


「作詞も作曲もできない。それでも俺は,君に歌で愛を伝えたかった」



次回,あすならないバンド道,第2話。「ラヴソングは盗作」。お楽しみに。

[連載]あすならないバンド道 #1 「あすなろう,犬山に」

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「ん~。もっと良いリズムないかなー」

これ見よがしなセリフを吐きながら,犬山(仮名)はアンプラグドなエレキギターをペンペン弾いた。エレキギターを弾く犬山は最高に格好良く見えた。友達たちも,犬山をキラキラした目で見ていた。ピーズのデブジャージそのものな犬山ですら最高に格好良くさせるエレキギターとやら…。欲しい。俺も犬山みたいに格好良くなりたい。エレキギターが欲しい!俺もエレキギターを弾きながら,何かそれらしい事をこれ見よがしに言ってみたい!

キース・リチャーズに憧れてギターを始めた?ジミー・ペイジだ?ジェフ・ベックだ?挙句エリック・クラプトンだと?パンクがどうした。グランジだのオルタナティヴ・ロックだの,そんなもんヘソが茶を沸かすぜ。俺は犬山の真似をしたくてギターを始めたのさ。実際,あの時の犬山ほどに格好良いギタリストなんて,見たことが無いくらいだ。

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[連載] あすならないバンド道 #0 「まえがき」

私は臨床心理学を専攻する大学院生だ。来年には30歳になる。26歳で年上の女性と結婚し,子はまだ居ない。今一番の関心事は博士論文の執筆だ。私は何としても博士号が欲しい。違った。私にはどうあっても博士号を取得せねばならない事情がある。ただ毎日に追われ,気がつくともう8月も終いに近づいている。最近では眠りにつくことが難しくなってきた。臨床心理士の不養生と,笑っていただいても構わない。体は至って健康だが,私の精神は確実にすり減っている。


こうじゃない人生も,きっとあった。私はエイヤと気合を入れてこの道を選択したが,それは同時に,ある可能性を放棄することでもあった。もし違った選択をしていたら,どうなっていただろうかと,考えることもある。しかし結局,最後にはこの人生を肯定するところでその考えは終わる。放棄した可能性は,あのときスッパリと放棄されたからこそ,可能性という輝かしい呼び名を得たのだ。看板に偽りあり。その現実は,決して輝かしいものでなどなかった。それでも私には,あの怠惰と言い訳に満ちた,どこにでもあるような凡庸の青春が,いくらか輝いたもののように感じられるのだ。これが単に美しいノスタルジーなのだとして,それが一体どうしたというのか。


先日某所にて,その青春を話す機会を得た。それを話す私はとても興奮していて,自分でも滑稽に思えるほどだった。思えば,私はそれを誰にも語らず生きてきた。しかし実のところ,ずっとそれを語りたかった。幸運なことに,「それを書け」と言ってくれた人が居た。話せば長い。その面白さも約束できない。それでも私は,その一言に背中を押され,バンドの話を書いてみることにした。上にも書いたが,これから皆さんの眼に触れるのは,どこにでもある凡庸な青春である。どうかスペクタクルな感動などは期待せず,私の遅筆にお付き合い頂ければと思う。

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