[次回予告]あすならないバンド道 第2話

「俺が君のために作ったラヴソングは,盗作だったんだ…」



その頃,俺はリア充だった。


はじめてできた彼女は,学校でもかなり人気のあったカワイコちゃん。
一方の俺は,これでもかというくらいに冴えない男子生徒だった。

どうすれば,君に似合う男になれるか…。


その答はギターが持っていた。


「作詞も作曲もできない。それでも俺は,君に歌で愛を伝えたかった」



次回,あすならないバンド道,第2話。「ラヴソングは盗作」。お楽しみに。
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[連載]あすならないバンド道 #1 「あすなろう,犬山に」

ペペンペンペンペンペンペペーン

「ん~。もっと良いリズムないかなー」

これ見よがしなセリフを吐きながら,犬山(仮名)はアンプラグドなエレキギターをペンペン弾いた。エレキギターを弾く犬山は最高に格好良く見えた。友達たちも,犬山をキラキラした目で見ていた。ピーズのデブジャージそのものな犬山ですら最高に格好良くさせるエレキギターとやら…。欲しい。俺も犬山みたいに格好良くなりたい。エレキギターが欲しい!俺もエレキギターを弾きながら,何かそれらしい事をこれ見よがしに言ってみたい!

キース・リチャーズに憧れてギターを始めた?ジミー・ペイジだ?ジェフ・ベックだ?挙句エリック・クラプトンだと?パンクがどうした。グランジだのオルタナティヴ・ロックだの,そんなもんヘソが茶を沸かすぜ。俺は犬山の真似をしたくてギターを始めたのさ。実際,あの時の犬山ほどに格好良いギタリストなんて,見たことが無いくらいだ。

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[連載] あすならないバンド道 #0 「まえがき」

私は臨床心理学を専攻する大学院生だ。来年には30歳になる。26歳で年上の女性と結婚し,子はまだ居ない。今一番の関心事は博士論文の執筆だ。私は何としても博士号が欲しい。違った。私にはどうあっても博士号を取得せねばならない事情がある。ただ毎日に追われ,気がつくともう8月も終いに近づいている。最近では眠りにつくことが難しくなってきた。臨床心理士の不養生と,笑っていただいても構わない。体は至って健康だが,私の精神は確実にすり減っている。


こうじゃない人生も,きっとあった。私はエイヤと気合を入れてこの道を選択したが,それは同時に,ある可能性を放棄することでもあった。もし違った選択をしていたら,どうなっていただろうかと,考えることもある。しかし結局,最後にはこの人生を肯定するところでその考えは終わる。放棄した可能性は,あのときスッパリと放棄されたからこそ,可能性という輝かしい呼び名を得たのだ。看板に偽りあり。その現実は,決して輝かしいものでなどなかった。それでも私には,あの怠惰と言い訳に満ちた,どこにでもあるような凡庸の青春が,いくらか輝いたもののように感じられるのだ。これが単に美しいノスタルジーなのだとして,それが一体どうしたというのか。


先日某所にて,その青春を話す機会を得た。それを話す私はとても興奮していて,自分でも滑稽に思えるほどだった。思えば,私はそれを誰にも語らず生きてきた。しかし実のところ,ずっとそれを語りたかった。幸運なことに,「それを書け」と言ってくれた人が居た。話せば長い。その面白さも約束できない。それでも私は,その一言に背中を押され,バンドの話を書いてみることにした。上にも書いたが,これから皆さんの眼に触れるのは,どこにでもある凡庸な青春である。どうかスペクタクルな感動などは期待せず,私の遅筆にお付き合い頂ければと思う。

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