[連載] あすならないバンド道#3 「仲間,束の間」

相変わらず冴えない俺も,ついには高校生になった。ラグビー部の強い高校だった(俺は弱小陸上部所属だった)。大阪市内にあったその高校には,それなりにチャラい奴らが集まっていて,俺はまったくそのノリについて行けなかった。正直,高校最初の一年間に,良い思い出など全く無い。俺はこいつらとは違う。そうとでも思わないと,とてもやっていけなかった。


ギターは続けていた。一人,ただ黙々と自室で練習していた。披露する相手も特に居ない。一緒に演奏する仲間も居ない。それでも俺は,とにかくギターを弾き続けていた。学園祭のステージで,ワーキャー言われながらフロアを沸かせる。そんな自分の姿を想像しながら,俺は自室のステージで一人,ヴァーチャル・ギグに勤しんでいた。そして,誰に聞かせるでもなく,一人,それらしいことをしたり顔で言う練習をし続けてもいた。「俺にはギターしかない」と,自分に言い聞かせる毎日だった。犬山の幻想は,俺の腫れ上がった自意識を支える唯一の拠り所だったのだ。膝から崩れ落ちそうな自分を支えたくて,俺はただ,それにすがりついた!

Read more...

スポンサーサイト

[次回予告]あすならないバンド道 第3話

ギターを弾くとき,俺はずっと一人だった。

仲間?いた事ない。バンド?夢のまた夢だな。

そんな俺に,彼は声をかけてきた。


「一緒にギター弾こうぜ」


俺に出来たはじめての仲間は,高校のクラスメイトだった。
俺は,こいつとギターをやっていきたいと,思っていた。

そんな束の間の希望について。


次回,あすならないバンド道,第3話。「仲間,束の間」。お楽しみに。

[連載] あすならないバンド道 #2 「ラブソングは盗作」

教室の大きな窓から差し込む光に照らされた凸はすごく綺麗で,私はそれに惹かれたんだと彼女は言った。彼女,山内美紀(仮名)は,大変明るく,誰からも好かれるような,カワイコちゃんだった。

まずもって,俺は山内さんの見た目が好きだった。しかし,当時の俺は女子に話しかけることすら出来ないほどのシャイボーイだった。それも滅多にないことではあったのだが,クラスの女子に話しかけられでもすると,顔面を真っ赤に染め,全身は鋼鉄のごとくこわばり,口からは「ガガガギギギ」と異音を発するといった誤作動を起こすほど,俺は極度の女子不安者だった。そして自意識過剰。当時の俺は,本気でこう思っていた。「この前髪が崩れたら,世界が終わってしまうのではないか」と。そんなやつが,好きな女の子に話しかけられるはずがない。当然,山内さんとは話したこともなかった。


ではなぜ,そんなカワイコちゃんと,中2のチンケなシャイボーイがお付き合いすることになったのか。…犬山だ。俺は犬山に「山内めっちゃかわいい…」とこぼした事があった。すると,なぜかモテていたチャラ男な犬山が,無神経にもそれを彼女に告げ口したのだった。俺はそれを聞いて動揺した。激しく動揺した。冷静に考えて,そんな好意など受け入れられるワケが無かったからだ。俺は犬山に詰め寄りたかったが,犬山はケンカが強いので,やめておいた。

押し出される形で俺は告白をした。きっと,最高にみっともない姿だったと思う。しかし,彼女はそれを受諾した。なぜだか分からず,聞いてみた。すると彼女は,冒頭のような理由を俺に話してくれたのだった。俺は犬山の無神経さに感謝し,お付き合いが始まるという現実に狂喜した。しかし同時に,「俺みたいな冴えないブサメンが,こんなカワイコちゃんに釣り合うはずがない…」とも思った。そんな自意識が,やがて俺を苛むようになったのだった。

Read more...

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。