援助者の動機とか性格とか ~逆転移ジェネレーター~

さぁ,なんとなくはじめたこのブログもついに100エントリ達成!2桁の向こう側に突入いたしました。よくもまぁ続けられたもんだ。

んなことは良いとして,珍しく今日は臨床の話を。

心理臨床家が人格者であるかどうかなんて,よほどの事がない限り問題にはならないと思います。心理臨床は技術体系の臨床的な適用だと思いますので,結局大事なのは技術です。つっても,この辺はもう大先輩の方々が語り尽くしている気がするので,ここではガッツリ触れません。

・・・しかし,いくら心理臨床が技術であるとはいっても,それを使うのは人間であります。マジンガーZや鉄人28号が,悪の手に落ちると最悪の破壊者となるように,さらに刺身包丁が殺人の道具に使われるように,優れた心理臨床の技術だって,いくらでも「悪」になりうる。いくら心理臨床家が技術職であったとしても,当人の人柄がそれと無関係なワケではないと思います。

だから,あえて。

「心理臨床家にとって重要なのは技術だけでなく,動機や性格もまた重要である」と言いたい。

まぁ,んなこたぁ当たり前だと思いますけどね。
しかし,「重要」であるという事の意味は,説明を要するでしょう。

ここで言いたいのは,「良い人である事」や「美しい動機を持つ事」の重要性ではありません。そんな事いう輩は,適当に知り合いの相談事にでも乗るか,町の聖人として暮らしておいてください。そのような人となりは「心理臨床家」の身につけるべき専門性とは言えない。よってそれに基づいて仕事をしようとする者は,心理臨床家である必要がない。

また,本来技術不足に帰属されるはずの失敗が,人となりに帰属されてしまうのならば,おそらくきっと,心理臨床家としての専門性の獲得は望めない。要するに成長が無いでしょう。だって,身につけるべき技術を獲得するのではなく,なんとか「いい人」になろうとするんですから。んなもんは個人的にやって下さいな。


じゃあ,おまいは何が言いたいの?と。

援助者の動機・性格は,その人の臨床の癖を生み出しうる,と言いたいのです。

大ざっぱに定義すると,
「動機」とは,その人の「こうしたい!」という方向性です。
「性格」とは,その人の行動を規定する内的な要因です。

その「こうしたい!」が,Clのニーズと合致していなかったら?
その「人格」が,セラピーの進行に負の影響を与えるとしたら?

…おそらくアンハッピーな出来事だって起こりうるでしょう。


しかしここで重要なのは,それらは全てTh自身が持っているものだ,ということです。自分がこんな動機を持ってて,こんな性格なんだってことが分かってれば,いくらでも対処する術はある。一方,それに対し無知であるならば,対処することもできず,ただただ逆転移に呑まれてしまうかもしれない。

そうやって,自分の動機や人格を理解し,それに対処すると言うことも,広義の「技術」なんだと思います。自分自身の特徴を把握し,適切な形でそれに対処していく。セラピストには高度な自己制御が必要かと思います。


動機にも色々あると思います。

自分が不登校で苦しんだから,いまそれで苦しんでいる人の力になりたい,というような,自身の問題から派生した動機。

人を救いたいんだという,純粋な援助動機。

人を良くしたい,ひいては自分の思い通りにしたい,というような利己的動機。

人の数だけ動機があると思います。
しかしながら,そのどれが優れていて,どれが絶対駄目!って話ではないのだろうと。例えば,自分の問題から派生した動機に関してですが,もしもその問題についてTh自身が折り合いを付けられていないとしたら,ThはClの問題を見るのではなく,自分自身の問題を見つめているだけ,なんて事にもなりかねません。相手の事を見ているつもりが,実は鏡を見ているだけだった,と。

けれども,その問題は問題として,とりあえずこっちにおいといて,と出来るのならば,そのような動機だって促進的な役割を果たしうる。

性格に関してもそれは同じだと思います。

人間嫌い,という性格。反対に,人間大好き,という性格。

どっちも良いところもあれば悪いところもある。


動機や性格そのものには優劣はない。しかし,それに対してどのような対処を行っているか,という点には,確実に技術的な優劣があるでしょうね。自分の癖を把握し,それに対処する,さらにはそれを利用する。その上で細かい介入技術が生きてくるのだと思います。


長くなったので,日高義樹のワシントン・リポート風に要点をまとめます。

①心理臨床は,ほとんど技術が物を言う仕事だ。
②技術を使うのは人間なので,当人の動機や性格も臨床に影響する。
③動機や性格は臨床上の癖・逆転移を生み出しうる。
④動機・性格は様々有るが,それを把握し対処することはできる。
⑤動機・性格そのものの優劣ではなく,それに対する対処の優劣は語られてしかるべきだ。
⑥動機・性格への対処も,広義の技術の内に含まれるのではないか。(つまり訓練によって改善可能である)


以上です。

このエントリを書くきっかけになった書籍は,

心理援助の専門職になるために―臨床心理士・カウンセラー・PSWを目指す人の基本テキスト
マリアン コーリィ ジェラルド コーリィ Marianne Schneider Corey

Amazonで詳しく見るby G-Tools

です。ご参考までに。


明日時間があれば,臨床心理学的援助へのアクセスビリティについて書きます。

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