アタッチメントと臨床の邂逅 ~レビュー書き散らし~

文章が長いと言われました。はい。ほんと長いですね。迂遠癖があるもので,ついつい長くなるのです。こればっかりは譲れないZE!!

さて,こないだネタふりした論文読みました。アタッチメントとサイコセラピーに関する実証研究のレビューですョ。


Daniel, S.I.F. (in press) Adult Attachment Patterns and Individual Psychotherapy: a Review. Clinical Psychology Review.(巻号等未定)

ちなみに,この論文は網羅的にレビューして,簡単にコメントつけるってくらいの論文です。新しい枠組みなんかを提案するわけではありまへん。

突っ込もうと思えばいくらでも突っ込める内容ではありますけど,ここはいっちょ,好き勝手にまとめてやりまっしょい。ちゃんと長いですョ!
だいたいまぁ,アタッチメントってのはSecureっていう理想像というか,適応的な人間像を描き出してる研究分野なわけですから,Secureはセラピーにおいても良い感じダヨ!なんて事は当たり前なわけで。

例えば,クライエントのアタッチメント・パターン(この論文ではパターンって言ってる)と治療同盟の関係を論じた項なんかでも,結論としては

Secureなアタッチメント・パターンと,肯定的な治療同盟の形成とは,正の相関がおまっせ

ってな感じなんすな。アウトカムに関しては結果が一貫しない点もあるけど,

Secureなアタッチメント・パターンは肯定的な治療結果を予測しまっせ

ってのは有望な命題みたいですヨ。でもまぁ,このレビューの問題点というか,アタッチメント&サイコセラピー研究自体の問題点というか,

1.アタッチメントの測定法がバラバラ
2.アウトカムの指標もバラバラ
3.Treatmentの中身もバラバラ(短期力動的心理療法・CBT・mixed…)
4.対象者がバラバラ(ほとんどの研究が疾患を特定していない)

なんてことがあるんですな。なので,安易な結論など出せやしません。

とりあえず,一般論としてSecureが良いってのはなんの驚きも無いわけで。むしろ思ったほど証拠が揃ってないなぁっていう印象。



まぁでも面白いのは,アタッチメント・パターンによって,有効な介入方法が異なってくるだろうということ。これは治療同盟に関しても,アウトカムに関してもそうだった。つか,究極的にはアウトカムだけでもいい気がするけど。詳細はめんどいので書きませんけど,おそらくアタッチメント&サイコセラピー研究におけるスマッシュヒットは,このポイントだと思う。とは言っても,パラダイム全体が方法論上の問題を抱えてはいるが…。

もし詳細が気になったら聞いてください。

もう少し具体的に言うと,アタッチメント・パターンごとに,ラポールを取りやすい方法とか,症状の改善に役立つであろう方法ってのが異なってくるってことらしい。具体的なInterventionに関する事もあるけど,むしろ面接でのセラピストの対話スタイルを中心に,少しではあるけど,証拠が提出されている。こういう人にはこうした方がアウトカムが良くなるよって感じで。さすがに無作為割り付けまではやられてないみたいだけど。


で,これを受けて,じゃあ一体これらの研究がなんの役に立つのかって事なんですけど,それはもう,アセスメントへの貢献ってことになるみたい。こんな人にはこんなやり方~とか,こんな人のこんなセラピーの段階ではこんなやり方~って感じ。そういう情報は,セラピストが介入戦略を選択する際の意志決定を助けるぜって書いてある。


そうだよね。研究はまだ足りてないとは思うけど,この研究分野の最終的なゴールはそこなんじゃないかと思う。

つか僕もそう思ってたんですよ。アタッチメントをサイコセラピーに導入してみて役に立つとしたら,見立てて方針やら戦略やらを決定する段階でだろうなと。別段ターゲットにする必要は無い希ガス。


この論文でも,アタッチメント自体をターゲットにした研究がレビューされているけど,結果は全く一貫していない。

そもそも尺度の再検査信頼性やら構成概念妥当性の問題,アタッチメント・パターンについての自己報告の可塑性とか,色んな要因が交絡していて,もし変化が観察されたとしても,それが介入の効果なのかなんなのか,よく分からない。

つか,そもそも,一般的なアタッチメントと,セラピストとの間で形成される(というか対象をセラピストにした場合に自己報告される)アタッチメント・パターンとが異なるものだったりして。こうなるともう概念的には大混乱。何がアタッチメントで,何がアタッチメントでないのか。どうしたもんかいな。



んで,極めつけはTravis, Bliwise, Binder, and Horne Moyer (2001)。

彼らの研究によると,プレポストで66.9%ものクライエントにアタッチメントの変化が見られたが,その大半がInsecureからInsecureへの変化だったそうだ。数少ないInsecureからSecureへの変化を示した群は,プレで症状が最も軽い一群だったとのこと。だけど,前者も後者も,症状自体は同じ程度改善したんだそうだ。

一体全体なんの症状なのかも分からないし,介入方法もTime-Limited Psychoanalytic Psychotherapyとだけ記述されていて,具体的な事は皆目分からないんだけど,要は,アタッチメント・パターンが変化しなくても,症状自体は改善可能だってことでしょう。

じゃあ,別に殊更アタッチメントをターゲットにする必要は無いと思う。もちろん,対人関係上の困難とか,アタッチメント・パターンそのものが中心的なテーマと関連する場合であれば,そうする事も選択肢に入るだろうけど。


ただしこのレビューはポジティブに結論づけたいみたいだから,概ねプレポストでの変化はInsecure→Secureの方向性だよ,だから心理療法はアタッチメント・パターンを改善しうるよってまとめてる。それも全くのウソではないと思うけどね。結果的にそうなってたって事はあるだろうし。心理療法は基本的に人間関係を使う治療法なわけだしね。当たり前といえば当たり前かもしれない。



だけど,アセスメント時に考慮する変数としておく方が,ベネフィティカルな気がするな。これが現段階における,当Lab.の暫定的結論です。


とりあえずこんなところです。他にも,セラピストのアタッチメント・パターンの効果とか,セラピスト-クライエント双方のアタッチメント・パターンの交互作用とか,色んなテーマの論文がレビューされてます。知見も問題点も含めて,割と「勉強になる」論文でした。

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