眠らない脳みそ ~身の丈いっぱいの収束~

ここ3日ほどではあるが,眠るのが難しい。

どうしても考えてしまう。考えてしまうから,本を読んでしまう。眠ろうと思ってメガネを外しても,一向に眠りが降りてくる気配がない。



だけど,今は考えることが楽しい。駄目かも。
ここ数日,自分が何をしようとしていたのかってことは分かった。

それは,今自分がやっていることを,理解しようとしていたってことだ。

そしてそのツールとして,科学哲学の思考法を導入していたってことなんだろう。ここ数日そういう営みをしていたんだということも,科学哲学の思考法によって理解された。循環的だな。


科学哲学の冒険は,各論的に進んでいく体をとっているから,最初は出てくる概念や思考法について,バラバラに考えていた。しかしながら,繰り返し読む内に脳みその中に地図が出来てきた。これはここについての話,これとこれはここについては同じ事を言っている,等々。

そして,そのような地図の中に,とりあえず自分のやっていることを位置づけることが出来た。つまり,自分がやっていることについての,とりあえずの理解に達したというわけ。


自分は因果の発見とは異なる説明を試みているようだ,とか,

観察不可能なものを観察するためではなく,検知するための手続きを使っているんだな,とか,

自分のやっていることは理論の根本的改革ではなくて,理論の統合性を高めるという営みに近いんだな,とか。

書き上げてみると,哀しい程に大したことがない。



この過程で思ったのは,科学哲学は研究のための基礎を提供してくれるわけではないということだ。むしろ,研究を理解するための手助けをしてくれる。もちろん翻って言えば,科学哲学的な枠組みに従って,研究を構成することはできるのだろうけども。


そしてもう一つ。現代の臨床心理学者は,極めて科学哲学的な営みを行っているということ。何をエビデントであると見なすのか,どうすればエビデントな知見を生み出せるのか,エビデントな知見は如何に個別事象の説明に役立つのか,とか何とか色々を,現代の臨床心理学者の一部は積極的に考え,提案している。それはきっと臨床心理学が,未だ発展途上な学問であることによるのだろう。自らの行いを正当化するためのメタ的な枠組みを設定して,それに乗っかった研究を行うという,自作自演。なんというか,面白い状況だなぁと感じられる。とは言っても,これは別に現代の臨床心理学者に限ったことではないのであるが。


多分,自分の研究はそのような研究の文脈のど真ん中に位置づけられることは無いだろう。だけど,それにあこがれる一人ではあるのだ。


そして,科学哲学の言葉を放棄し,今改めて自分がしていることについて考える。なんだか言葉にならない。引用文献的な思考によって,ようやくなんだかそれらしい事が理解できた気になれたのだな。

そして,今,誇大的なホラは消え,自分のやっていることの背丈がようやく見えてきた。自分は今,ただただ,大河に落とす一滴を,危うくも大事に運んでいるだけなのだろう。それは決してポロロッカなど起こさない,ささやかな一滴なのだろうと,身の丈にあった気取り方だけが,結局の所手元に残った。





ええ。ええ。まだまだまだまだ,今考えてますんで。


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戸田山 和久

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Comment

小生は修論のとき,因果関係を言ってみたかった。少なくともあこがれて,近づこうとした。でも,実験以外の方法でやってみたかった。そして,臨床っぽい分野でやりたかった。それがどうしたらできるのかって,実はよくわかんなかった。幸い,恩師の協力により,縦断でデータがとれた。そのときは誇らしげだったけど,今考えるとちょっとデザインが貧弱ゥ。ただ,今になって自分がやりたかったことは,臨床医学の分野で発展してきた臨床疫学とかの方法論ですっきり理解できるようになった。つまり,「引用文献的な思考」って大事だと思うよっていうのが言いたかったのかもしれない。小生の場合は,誇大的なホラの段階で修論を完成させてしまったのが悔やまれる。でも,悪くはなかった。
>今考えるとちょっとデザインが貧弱ゥ。

うぅ,きっと同じような事思うんだろうな・・・。成長って切なげ。

引用文献的に考えることで,ようやく僕の狭い世界が広がります。自分の狭い世界そのものを俯瞰できたりして。巨人の肩に立つことが許されてるのって幸せな事だなぁと実感します。

冷や汗をかくのは,引用文献による権威付けをしていたり,引用文献のみによって正当化しようとしていたりって事に陥りそうになる自分を見つけた時です。「おいコラ,このボケ,自分で考えろ!んで自分で責任持て!」って。
  • 2006/11/23 21:42
  • Deco
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