未だ始まってもいない人間が泥水に入っていく

最近,大学の某先生とギターで遊ぶのが楽しみになっています。

しかしですね,相手は若い頃にスタジオミュージシャンまでやってた凄腕。こちとらただやりたいようにやってきただけのポンコツ。セッションしてもすぐバッキングに引っ込んでってしまいます。それでも楽しいのだけれど,これがもう悲しいほどに,全くうねらない。

見た目上,同じコード・同じリズムではあるが,実際やってる事が全然違う。僕ももう26,もうすぐ27になりますから,これから某先生と同じにしようったって難しいかもしれない。やっぱりね,基礎からちゃんと訓練してきた人は違います。

でもね,それは別になんら問題ない。それでも音楽は楽しいし,遊んでるくらいであれば,誰に迷惑をかけるでもないから。バッキングに徹していれば,スケールから外れてボロボロな演奏をしてしまうなんて事も無いわけで。テクニカルな演奏において,僕はうねりを生み出せないってだけです。ハードコアパンクであれば,そりゃそれなりにやってきましたから,やれますよ。だけど,他の演奏に対応できない。それは,基礎ができていないからです。

基礎とかテクニックに毒されてたまるか!なんて事を本気で信じていたギター少年は,結局広い世界に出て行く術を身につけることなく,できることといえば,ノイズ混じりのやかましい演奏とダイナミックっぽいパフォーマンスだけ。そりゃあ,そういう事をやるのであれば,必要十分です。しかも僕はそういうのが好きなものですから,そういった世界の中に居ることが許される間は,特に問題なく,人から「ライブが上手いね」なんて誉められて悦に浸って,それで万事オッケーですよ。

だけども,違った事が必要になると,できない。いつも使ってるテクニックが使えない場面だと,もうどうしたら良いか分からず,ただ決まったリズムとコードでバッキングするだけ。要は「何もしない」演奏をするだけ。体系だった訓練をしていないから,やれる事しかできないし,やれることも少ない。僕はこれのプロでもなければ専門家でもないから,良いんですけどね。ただただ自分一人が残念なだけで。



だけど,臨床は違うよね,っていう話。

セッション後,同じく某先生から,うちの大学のトレーニングシステムが如何に足りておらず,こんなことじゃあ未来はない,これで危機感を感じないのがどうかしてる,なんて事を,延々さも責めるような口調で話される。色々言葉を変えながら,結局言ってることは,「こんなシステムで育った君は臨床できるようにならないよ」って事のように聞こえる。某先生の挙げる根拠は明確です。全く体系だった訓練を受けていない。もう,それに尽きます。もちろん,なんとか療法をやるための訓練の話ではなく,もっともっと基礎の部分の話であり,同時にそれはなんとか療法以上に重要だったりするわけで。


体系だった臨床の訓練をしていない自分は,さながらギタリスト気取りのアマチュアです。僕のギターの演奏力と全く同じ事が,臨床でも起こりかけている。


金科玉条の世界,見て盗む世界,アートと名乗る世界。できる人は良い。本当にすごいと思う。それに実際,見て盗んだり,アートというか体芸だったり,十年早かったりするわけですから,お門違いな世界ではないと思います。だけども,いかに訓練し,また次の世代にそれを伝えていくことができるか,という意味では,基礎を体系的に訓練するという事がどれほど必要か。それは分かります。分かりますよ,先生。


プロになろうというのに,アマチュアなアティチュードではポンコツにしかなれない。


分かりますよ,先生。



話を聞いていてむかついて来たので,こう言いました。

「話を聞いてると,僕には臨床の未来はないような気がしてきます」

するとこういう応えが帰ってきました。

「そうだね。未来,ないんじゃない?研究では面白い事をやってるんだから,そっちの未来はあるんじゃない?」


僕はもっとムカムカしてきたので,こう言いました。

「納得しがたいです。飲み込みがたいものがあります」

さらに,以前からいくら教えを請うても応えてくれなかったではないか,じゃあどうしろと言うんだ,そういった事を続けました。納得できないのは,自分の臨床の力に対する評価ではなく,君はもう手遅れだよという予言と,それはここのシステムのせいなんだけどね,というニヒリズムに対して,でした。特に前者に対しては,全力で抗いたくなった。

「腹が立ちます」

と僕。某先生はそれに対して,

「それが大事なんだよ」


結局のところ,うまく焚きつけられたって事みたいです。

ありがとうございます。僕を怒らせてくれて。


そしてその後全力で主張し,結果,機会を得る事ができました。





浸かりましょう。泥水に。はまりましょう。泥濘に。




「今に見てて下さいよ!」



そうタンカを切って出て行く僕を,笑顔と憎まれ口で見送る某先生。



あなたは立派な指導者じゃないですか。体制によって飼い殺されているとしても,あなたは立派な指導者じゃないですか。ずっと,ここに居てくださいよ。馬鹿を承知で,本気でそう思います。

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